燃焼改善

 ロータリーエンジンでは、以下の理由から軽負荷域での燃焼安定化が課題である。
(1)吸気弁が無く、吸気ガス流動も少ないため燃料の気化がしにくい。(レシプロエンジンで燃焼改善に用いられる、タンブル流、スワール流などのガス流動がロータリーエンジンでは用いることが難しい)
(2)点火プラグを燃焼室内部へ突出させることが出来ない。(ローターが摺動してくる為点火プラグはプラグホール内部へ設置される)
(3)排気工程と吸気工程のオーバーラップが大きいので吸気中へ排気ガスを持ち込む割合が大きくなる。(内部EGR量が多い)

燃料気化の促進
 EGI化に伴い、燃料噴射インジェクターにエアブリードを設け、燃料液滴の微粒化を促進させた。その後、最新のロータリーエンジンでは燃料噴射した壁面に直接エアを噴射するジェットエアミキシングシステムと12噴孔インジェクターを採用し、吸気ガス流動が少ない領域での燃料気化の促進に対処している。

点火プラグの進化
 点火プラグは点火プラグホール内に設置される為、着火性の確保が必要になる。さらにそれに加え、360度で1点火するロータリーエンジンは通常の4サイクルレシプロエンジンの2倍の点火回数になる為、点火プラグには高い耐熱性が要求される。従って、低燃費化や低温域での着火性などの実用域での使い勝手と高出力化に伴う耐熱性など諸性能を満足させる為には点火プラグの性能向上がロータリーエンジンの性能向上を握っていた。
 初期のロータリーエンジンでは外側電極2極から4極のエアギャップタイプを採用し、1989年に中心電極に白金チップを採用した外側電極4極スーパーエアギャップタイプを採用し、最新のロータリーエンジンでは極細イリジウム合金の中心電極と細い白金合金の外側電極を用いたマイクロ1極エアギャップタイプを採用している。

オーバーラップの低減
 軽負荷域での燃焼改善のために燃料噴射系や点火系の改善を進めてきたが、抜本的な改善とはならないため、吸排気工程のオーバーラップを低減させる技術として従来のペリフェラル排気方式からサイド排気ポート方式へ変更された。
 サイド排気ポート方式は吸気ポートと排気ポートのオーバーラップをなくすことが出来る為、ロータリーエンジンの実用化初期の段階から期待された構造ではあったが、当時は出力や信頼性の問題に目処が立たなかったため、実用化が見送られていた。その後、ガスシールの進化や、オイル消費低減など、ロータリーエンジンの諸問題が解決されるに伴い信頼性も確保され、ローターサイド面を介しての吸排気ポートの連通を遮断するカットオフシールの開発により吸排気のオーバーラップ量低減が可能となり、結果狙い通りの燃焼安定化を実現できた。


以上の燃焼安定化の為の三つの分野の改善により、最新のロータリーエンジンは旧型に比べ30%の燃費改善を図っている。